英国の考古学専門誌『Antiquity(アンティクィティ)』の「ベン?カーレン賞」を日本人が初受賞

掲載日:2024-12-19
研究

 金沢大学古代文明?文化資源学研究所の内山純蔵客員教授(筆頭著者),九州大学アジア埋蔵文化財研究センターの桒畑光博学術共同研究者(当時),鹿児島県南種子町教育委員会の小脇有希乃氏,弘前大学人文社会科学部の上條信彦教授らの共同研究グループが執筆した論文が,世界の優秀な考古学論文に贈られる「ベン?カーレン賞」を日本人で初めて受賞しました。受賞発表は,『Antiquity』最新号(2024 年 6 月 11 日発行)で行われました。

 英国の考古学専門誌『Antiquity』は,1927 年に創刊され,世界の考古学会で最も権威ある審査制の学術誌(年 6 回発行)です。これまで,全世界のさまざまな地域と時代の研究に取り組む多くの考古学者に広く読まれています。その『Antiquity』が毎年選定する「ベン?カーレン賞 (Ben Cullen Prize)」とは,全世界の考古学への“抜きん出た貢献”を認められた優秀な研究論文に対して与えられる賞で栄誉ある賞の一つです。

 

 【受賞論文】(2023 年 6 月掲載)
 論文名:Disaster, survival and recovery: the resettlement of Tanegashima Island following the Kikai-Akahoya ‘super-eruption’, 7.3ka cal BP
 著者名:Junzo Uchiyama, Mitsuhiro Kuwahata, Yukino Kowaki, Nobuhiko Kamijō, Julia Talipova, Kevin Gibbs, Peter D. Jordan & Sven Isaksson

 今回受賞の対象となった論文は,北欧の大学と連携した学際研究プログラム「CALDERA」によって,最近 3 万年間の地球史上で最大の破局噴火(※1),7300 年前の鬼界アカホヤ噴火が,縄文時代の鹿児島県種子島に及ぼした影響をさまざまな分析方法を用いて実証した論文です。このように超巨大災害の長期的影響を知ることは,今年 1 月の能登半島地震や急速な地球温暖化に伴う異常気象,パンデミックなど,巨大災害に見舞われるようになった現代社会がどのように生き延び,持続性の高い社会に転換していくべきか,多くを学ぶことができると期待されます。

 

図1:現代の桜島の噴火(2011 年 6 月,内山純蔵撮影)
九州南部は,世界有数の巨大カルデラが集中し,活発な火山活動でも有名である。桜島は,3 万年前に破局噴火を起こした「姶良カルデラ」(現代の鹿児島湾北部)の縁辺部にある火山である。

 

 

【用語解説】

1:破局噴火
 破局噴火とは,火山噴火のうち,莫大なマグマが一気に地上に噴出し,火砕流や火山灰が数十?百万平方キロの単位で地上を覆う壊滅的な噴火形式を表します。日本では数千?1 万年前後の間隔で生じ,鬼界アカホヤ噴火はそのもっとも最近のものです。

 なお, 鬼界アカホヤ噴火についての一般的な情報は,ウィキペディアや一般書の情報が古く,年代?規模について誤った報道も散見されるので注意が必要です。噴火規模についての最新の情報は下記を参照ください。この文献によると,従来考えられてきたよりも規模の大きな噴火だったことが判明しています。
 Shimizu S. et al. Submarine pyroclastic deposits from 7.3 ka caldera-forming Kikai-Akahoya eruption. Journal of Volcanology and Geothermal Research 448 (2024) 108017.
 URL:https://doi.org/10.1016/j.jvolgeores.2024.108017

 

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ジャーナル:Antiquity

研究者情報:内山 純蔵

 

 

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