子どもの個性を尊重し、誰もが自分らしく過ごせる社会を

菊知 充先生が挑むのは、子どもたちが自己肯定感を保ったまま成長し、生涯にわたってその才能を発揮できる社会だ。そのために、子どもの個性を「見える化」し、一人ひとりに合った関わりを日常生活に根づかせる仕組みをつくろうとしている。

子どもは一人ひとり、かけがえのない個性を持つ。そのため、ある子にとっては何でもないことが、別の子には大きな負担になる場合もある。このような日常的な負担が積み重なると、子どもの心は深く傷つき、将来的にさまざまな影響が現れる可能性があるという。例えば、「心の回復力(レジリエンス)」が低下することで、ストレスからの立ち直りに時間がかかり、家庭や学校、職場などでの適応が難しくなるケースが認められている。

このような問題を防ぐには「子ども一人ひとりの個性を知った上で、その子に合った関わり方を選ぶこと」が重要だ。菊知先生は子どもたちの生き生きとした生活を守るべく、脳画像による「個性の見える化」と、その結果に基づく「子どもとの関わり方」の両面から研究を進めている。

脳画像を測定?分析し、子どもの個性を「見える化」する

子どもの個性を見える化する手段として菊知先生が用いるのが、「脳機能画像測定技術」だ。脳の活動に伴って生じる微弱な磁場を「脳磁図計」という装置で測定し、得られたデータをもとに、脳の働きを推定?可視化する。これにより、一人ひとりの脳の使われ方の特徴や傾向をある程度把握できるという。

「脳画像の測定?分析を進める中で、発達障害の子どもに見られやすい脳の特徴や傾向などがわかってきた。行動や認知パターンと脳活動との間の関係性も見え始めている。現段階ではまだ個性を正確に把握できるとは言えないが、今後もデータを積み重ねつつ、個性の可視化に向けた土台づくりを進めたい」と、菊知先生は展望を語る。

支援を日常に根付かせる仕組みづくりを

将来的に脳画像で子どもの個性を正確に把握できるようになれば、その結果に基づいて、その子に合った関わり方を提供できる。菊知先生はそうした未来を見据えて、実際に子どもたちと関わりながら、より良い支援のあり方を模索している。

その関わりの一例が、子どもたちと一緒に紙粘土でものづくりをしたり、太鼓を叩いたりといった芸術活動だ。子どもたちが安心して好奇心を発揮できる場をつくるため、試行錯誤しながら活動を続けている。また、睡眠の質や生活リズムを整えるためのプログラムを実施するなど、健康面のサポートも進めているという。

さらに、菊知先生はこれらの活動を研究室内での「特別な支援」で終わらせず、より多くの子どもたちに届けるための仕組みづくりにも力を入れている。例えば、学校活動の中で個々の好奇心を尊重した個性を大切にしながら育った子どもたちは、やがて大人となって社会を担うようになる。そのため、こうした子どもへの支援は、将来的に社会全体の精神的幸福度を高めることにもつながる。「すべての子どもが自己肯定感と好奇心を持ちながら成人し、世界でも類を見ないような才能を発揮しながら活躍する。そんな機会に満ちた社会をつくるのが夢だ」と、菊知先生は朗らかに笑う。

(サイエンスライター?太田 真琴

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