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*KU-SGU Student Staffインタビュー企画*
理工研究域生命理工学系 准教授

黒田 浩介 さん

KU-SGU Student Staffインタビュー企画は、国際経験が豊富な本学森林舞会_pt老虎机游戏-【亚洲最大娱乐平台】@、学生等に学生目線でインタビューを行い、インタビュー対象者の経験や考えなどを本学学生等に広く知ってもらうことを目的としています。
第一弾では、理工研究域生命理工学系の黒田浩介准教授にお話を伺いました。

 

ー初めに、先生の研究内容について教えてください。

私は、『イオン液体』について研究しています。イオン液体は、水、メタノールやエタノールなどの有機溶媒によって溶かすことのできないものを溶かす溶媒で、『第三の液体』と呼ばれています。水や有機溶媒で植物を溶かすことはできませんが、イオン液体であれば可能です。これが現在私が取り組んでいる研究で、植物の主成分であるセルロースを溶かしてエタノールを作っています。このエタノールがバイオエタノールですね。トウモロコシから生成するバイオエタノールに次ぐ第二世代のバイオエタノールと言われています。現在、埋蔵量に限りがある石油の使用量を減らし、二酸化炭素の排出量を減少させようという取り組みが広がっています。バイオエタノールを使用すれば、もちろん二酸化炭素は排出されますが、その原料である植物が二酸化炭素を吸収しているので、『カーボンニュートラル』の状態を実現できる訳です。しかし、セルロースからエタノールを生成するには莫大なエネルギー、コストが必要で、得られるコストよりも大きくなってしまうのです。これが、バイオエタノールが普及しない最大の理由なんですよ。ですから、このコストを抑えられるように、イオン液体の改良を続けています。また、医療分野への応用についても研究しています。細胞にイオン液体をかけて凍結させると、細胞を蘇らせることができ、様々な細胞のバンクを作れるのではないかと考えています。私が勝手に呼んでいるだけですが、イオン液体はまさに『魔法の液体』なんです。

ー環境問題だけでなく、医療への応用の可能性も秘めているなんて、イオン液体は本当に魔法の液体ですね。
先生は、なぜイオン液体について研究することを決めたのですか?

私は東京農工大学で生命工学を専攻していたのですが、そこに厳しいけれど面倒見の良い先生がいらっしゃって、その先生のもとで研究すれば自分を伸ばすことができるのではないかと考えてその先生の研究室を選びました。その研究室がたまたまイオン液体を研究していたんです。専攻である生命工学からは少し離れて化学の方に軸を置きました。イオン液体は非常に高価なのですが、世界の諸問題に貢献する、大きな可能性を秘めています。その魅力にとりつかれて、現在も研究を続けています。

ーイオン液体の魅力にとりつかれたから、研究者の道を選ばれたのですね。

そうですね。その中でも大学を選んだのは、自分の責任で、社会貢献を考えながらも、企業の利益などは考えずに夢の実現を目指せると考えたからです。今は、やはりイオン液体は面白いという気持ちが、研究の原動力になっていますね。この『面白い』という感覚が私を動かす原動力のように思います。

ー「面白い」という言葉についてもう少し詳しく教えていただけますか?

もちろん、研究者としての地位を得たからには業績を残さないといけない、自分の研究を世に発信したいという気持ちもあります。しかしながら、根本的には研究は「自分がやりたいから、面白いと思うからやっている」と言えると思います。その過程において学生たちと一緒に活動することや研究室に配属された学生が成長して卒業?修了していく姿を見るのが楽しく、やりがいを感じます。ですから極端にお話しすると研究は『趣味』であるとも言えると思いますし、それに対して私の場合幸い賃金がもらえているということになるかもしれません。

ー好きなことを仕事にすることができる人はそんなに多くないように思います。
研究職という仕事は特別なものなのでしょうか?

大学教員もあくまで雇われのサラリーマンですから、その他の職種と比較した時に雇用される側であるという点においては大きな違いはありません。ということを考えると『仕事』を勝手に自分の『趣味』にしてしまうための熱意や努力、アイディアがあるかがポイントだと思います。大学関係以外の友人たちの話を聞いていると、仕事を『賃金を得るための対価』として認識しており、勤務時間外のエキストラな仕事や勉強等はしたくないと考えている人が多いように感じ、もったいないなと思います。近頃『ワークライフバランス』という言葉がありますが、『ワーク』と『ライフ』を分けるのではなく『ワーク』をいかに『ライフ』にできるかが重要なのではないかと思います。

ーお忙しい日々をお過ごしと思いますが、何か趣味などはありますか?

実は最近結婚しまして、忙しくても食事は妻と一緒にするのが楽しみです。話は少しずれますが、食後はパソコンを開いてまた仕事に戻ることも多いので、共働きですが家事の分担について妻がどう思っているかはわかりません。一応、お弁当づくりなど、頑張ってはいるつもりですが…。あとは、温泉と自転車に乗るのが好きです。暇な時間があるとついスマホを触って意味のない記事を見たりしてしまいます。温泉や自転車に乗っているとそういったものから離れて研究のことも含めてさまざまな思考を巡らせることができます。

?ー話が変わりますが、先生の華麗なる研究歴を拝見しましたところほとんどが英語にて執筆されていました。
その理由を教えてください。

研究そのものに垣根や国境はありませんので、研究において日本と海外を分けることが無意味なことなのかもしれません。日本語で論文を書く意義ももちろんありますし、何か新しい情報を検索する際母語である日本語を使うことはあります。しかしながら最新の研究を世に発信しようと思うときは必ず英語で論文執筆します。それは英語を理解する人口が日本語を解する人口の数十倍いることを考えると必然的なことです。例えばドイツ語がわからない私にとって、ドイツ語で書かれた論文は読めないし、検索にも引っかからないことを考えると、極端なことを言えば、日本語で書かれた論文は世界の多くの人々にとっては『無』に近いものと言えてしまうのかもしれません。もちろん、日本人にとっては母語で書かれた論文も同様に重要であることは大前提となります。

ー先生は学生の頃から英語が得意だったのでしょうか?

学生の頃は全くでした。でも英語が重要であることはもちろん感じていたので、学部時代の長期休みにオーストラリア?パースへ語学留学に行きました。語学学校でできた韓国人の友人から「あなたほど英語力が伸びた学生は見たことない!」と言われ、とても嬉しかった記憶があります。語学留学を終えてパース空港を出国しようとした際にオーストラリア人から話しかけられました。1回目では理解することができず、3回聞き直してようやく”What time is it now?”と言われていたことがわかったエピソードも今となってはいい思い出です。

ー金沢大学では理工系学生の留学経験者数は人社系と比べて少ないのが現状です。
これについてどう思いますか?

研究室配属になるのが学部4年であり、金沢大学も含め日本では理工系では修士までの進学が一般的です。私が特定の学生と接するのは基本的に学部4年から修士2年の3年間になります。この期間に語学留学など研究と直接関係ない留学をすると、学部卒業?修士号の取得に影響がでかねませんし、研究をメインにした留学をする場合だと修士号を取得してからでないと研究の能力的に難しい場合がほとんどです。この点で理工系学生、また理工系の先生たちはジレンマを抱えています。ですから、研究室に配属されてから留学?英語の重要性を認識するのではなく、先を見越して低学年の時間のあるうちに派遣留学や語学留学にまずは挑戦して欲しいと思います。その後、修士や博士へ進学し、研究留学にも是非チャレンジしてみて欲しいです。

ー最後に金沢大学生へのメッセージをいただけますか?

これはあくまで一般論ですが、受け身の学生が多いように思います。みなさん実感していると思いますが、現代は変化の激しいVUCAの時代です。コロナウィルスが1年間で私たちの生活を一変させたのも一例です。オンライン化がますます進展する一方、老舗のお店が倒産したり、何十年に一度の災害が一年に何度もやってきたりします。このような時代においては会社や組織に頼るのではなく、自分の頭で常に考えることができ、自分の意思のある人しか生き残っていけないと思います。研究において100個のアイディアを考え、メモして蓄積することでようやく1個の意味のあるアイディアにたどり着くことができるのと一緒で、急に自分の意思や意見を持つことができるようにはなりません。ですから、学生時代は自分の頭で考え、自分の意見を持つことができるようになるための訓練をして欲しいです。その具体的な訓練方法が留学や課外活動に自発的に取り組むことや、大学での学習?研究なのだと思います。そういった訓練の積み重ねが後々の人生で大きな違いになってくると思います。ぜひ今日、一歩目を踏み出してみましょう!

 

【金沢大学黒田研究室】

http://ionicliquid.w3.kanazawa-u.ac.jp

【金沢大学研究者情報】

黒田 浩介

 

<編集後記>

KU-SGU Student Staff※

城下理彩子(人間社会学域2年)

『ワーク』を『ライフ』と分けないという考え方は新鮮でした。このように、過去に捉われない新たな考え方をされる点が、黒田先生の「イオン液体」という新たな物質の研究に生きているように感じました。

北村茜(人間社会学域4年)

研究や留学において、これまで黒田先生が熱意や関心をもって突き進んできた先に、黒田先生にしか作ることのできない唯一無二のキャリアを築いてこられたのだと感じました。

砂子阪将大(人間社会環境研究科M1)

1時間を超えるインタビューにもかかわらずにこやかにご対応いただき、黒田先生の洗練されたコメントから研究に対する熱意とこれまでの努力の軌跡を感じました。

※KU-SGU Student Staff:本学のスーパーグローバル大学創成支援事業(SGU)を学生目線で推進する学生団体

KU-SGU Student Staff

(2021年2月取材)

  • 学部時代、オーストラリア留学時に仲間たちと

    学部時代、オーストラリア留学時に仲間たちと

  • インタビューの様子:左から砂子阪、城下、北村(PC画面内)、黒田先生<br />
※インタビューはマスク着用にて実施しました。

    インタビューの様子:左から砂子阪、城下、北村(PC画面内)、黒田先生
    ※インタビューはマスク着用にて実施しました。

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